「ファクト(事実)に基づいた論理的思考」が役に立ちます。
「老後の資金不足」というのは、具体的に何歳の時点にいくら足りない、ということなのかを具体的な数字に基づいて考えてみるのです。
もちろん、個々のケースによって「老後の資金不足」は異なりますが、平均的な定年後の必要生活資金と、資産と年金支給額の合計額の差額を調べてみると、図表犯のようになります。
すなわち、45歳世代では2000万円、35歳代では25OO万円の不足が生じる一方、55歳より上の世代は、一般的に言って、老後の生活をあまり心配する必要はないのです。
このように、いたずらに将来を不安視することなく、「事実は何か」をまず考えてみることが重要です。
2番目に行うべきことは、「その課題は、どのような状態になれば解決されたと言えるのか」を考え、具体的に定義することです。
先ほどの例で言えば、「老後の資金不足」というのは、具体的に何歳の時点にいくら足りない、ということを言っているのか、どうなれば「理想のキャリア形成」を実現する正しいルートに乗ったと言えるのか、といつことを、数字や文章で具体的に定義します。
こうして、「戦略系コンサルティング・ファーム」のコンサルタントが、最終目標(ゴール)を明確にした上で、プロジェクトを進行させるのと同様に、私たちも「課題が解消された理想的な姿」をまず、明確にすることが重要です。
これにより、考えが枝葉末節なところへ飛んだり、行く先もわからず闇雲に行動したりすることを防ぐことができます。
そして、「問題の本質」と「目指すべきゴール」が明らかになったら、次はいよいよそれを解決する方法を考えます。
ここで、私たちが陥りやすいワナがあります。
私たちは、解決策を考えるときに、とりあえず目についたアイデアに飛びつくことが多いのです。
たとえば、資産運用において、複数の代替案を考えることなしに、「IT企業の株がいいらしいよ」とか「これからは、BRICS(新興国市場)の株式だ」とかいった話に飛びつく例が見受けられます。
そして、「IT関連企業の株式」の次は「BRIcs投資」そしてその次は、と新しい情報を仕入れてきては闇雲に投資し、それが失敗すると「これじゃなかった」と言ってまた新たな情報を探すそういうループにはまってしまうケースもあります。
こうした「代替案と比較しない思い込みの意思決定」では、けっして良い結果は生まれません。
かりに、一度、上手くいったとしても、それを反復継続することは、きわめて困難です(資産運用の世界において、そうした投資行動がいかに危ういものかについては、前書『貧乏人のデイトレ金持ちのインベストメント』で詳しく説明しています)。
私たちが行うべき正しい行動は、目の前のアイデアに飛びつくことではなく、可能性のある解決策をできるだけ多くリストアップすることです。
たとえば、「理想のキャリア形成」をゴールとした場合、①現在の職場でのキャリア転換(人事異動を申請する)②数年後の転職に備え「資格」をとる③数年後の転職に備え現在の職場で実績を積み上げる④転職するなど、いくつかの解決策の案をまず挙げてみるのです。
こう申し上げると、よくある反論は、「そんなことを言っても、資産運用はむずかしくてよくわからない」とか「キャリア・アップへの正しい情報が少なくて、判断できない」とかいうものです。
あるいは、資産運用であれば、「今は、BRIcs投資に決まっているじゃないか」などと自分の意見に固執し、異質な議論を受け付けないといった態度もよく見受けられます。
こうした状況は、論理的な思考が停止している状態。
「思考停止」であり、コンサルタントが「最もやってはいけないもの」として最初に教わるものです。
正しい態度は、筆者がコンサルタントから問われたように、その意見が、単なる思い込みか、事実(ファクト)かは、どうすればわかるのか?という問いを自分自身に出してみるのです。
また、むずかしくて判断できないのなら、「何がわかれば、先に進めるのか」を、また、情報が少ないのなら、「ほかにどんな情報があれば、判断できるのか」といった具合に、冷静に考えていくことが大切です。
こうした「解決策を立案する」フェーズで、有用な手法があります。
それが、第3章で説明した「ロジック・ツリー」です。
これは、一つの概念。
解決策などを論理的にその構成要素に分解し、その構成要素をさらに分解していく手法で、結果的に次々と枝分かれして木のような形になることから、嗣理の樹木と呼ばれているものです。
ここで、構成要素に分解する際に活躍するのが、第3章で見た、「ミーシー(MECE)」。
個々に見てダブりがなく、全体として漏れがないという考え方です。
このルールを守って「ツリー」を書くことで、幹や枝や葉が混在して「ツリー」が混乱してしまう事態を避けることができます。
つまり、「全体を漏れなく、整合的に、かつ構造的に把握する」ことができるのです。
また、この「木」を書く際に、強制的に、「ほかに見落としはないか」、「ほかの解決策はないか」という問い掛けを自分自身に行うことが大切です。
第3章で説明したように、こうした論理的な思考方法を「ロジカル・シンキング」と言いますが、問い掛けを自分自身に行いながら論理的に思考していく手法を、「自己に批判的」という意味で「クリティカル・シンキング」とも言います。
こうして、全体を「漏れなくムダなく」怖搬することで、漠然と考えていたときには気づかなかった課題の相互関係に気づいたり、そこから新たな解決策に思い至ったりすることができます。
ここで、気をつけるべきことがいくつかあります。
まず、一つ目には、構成要素の分解をあまり細かくしないことです。
人聞が一度に認識できる概念は4つ程度とも言われており、分類があまり細かすぎると、意味のある解釈や打ち手が引き出せなくなるのです。
いきなり小枝に分解するのでなく、大きな幹、小さい幹、太い枝というように、たりの枝分かれが4つ程度に収まるように、分解していくことがコツです。
一つ目には、「仮説思考との併用」です。
「ロジック・ツリー」の作成時には、「漏れなくムダなく」という原則は重視すべきですが、打ち手や解決策の構築を行う場合には、すべての部分を同じように細かく検討する必要はありません。
第3章で「外資系コンサルティング・ファーム」のコンサルタントが行っていたように、まず、全体をとらえることに注力します。
そして、全体像が把握でき、最初の複数の「幹」についてある程度の情報が得られたら、有望だと思われる解決策の「仮説」から優先的に、さらに「枝」へ、さらに「小枝」そして細かい検討に移ります。
「葉」次に、ある「仮説」に従って行動し。
あるいは行動した場合に何が起こるかを調査しその「仮説」の妥当性を検証します。
そして、その「仮説」が間違いであるとわかった場合には、間違えた枝分かれした場所まで、戻るのです。
つまり、「仮説」に基づいて進んで行ったとしても、「ロジック・ツリー」ですでに全体のリストアップがすみ、構造がわかっていれば、どこまで戻れば良いのかが明白なため、道に迷うことはないのです。
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